温室デイズ

「温室デイズ」
図書館から借りてきて読んでみた。中学生向きの小説なのか,とても読みやすく,一気に読んでしまった。
著者の瀬尾まいこが元中学校の先生だったとテレビで特集をやっていて,それで読んでみようと思ったのである。
そしておもしろかった。時は今から20年ぐらい前か。校内暴力がさかんだったころの話である。
そのころ,私が勤務していた学校も荒れていた。私が赴任したころは既に荒れが収まってきたころだと聞かされたが,私にはそうは見えなかった。
まず,入学式の日に,私のクラスの生徒がピアスをしていたのを注意したら,「殴るぞ!」と脅された。彼は3年生のなかで一番のワルだとあとから聞かせれたのだが,なぜか私が担任になった。つまり,他の先生方は担任になるのがいやだったんだろう。
この問題児も,小説の問題児と同じように,学校に来たり来なかったりしていたのだが,私のクラスになってからは毎日登校してきた。そして毎日問題を起こした。教室を荒らし,校舎を荒らし,とても自由にしていた。疲れると,保健室で休んでいた。
そんななかでも私は担任として,彼と関係を結ぶよう努力をしていった。しかし,小説のようにはうまくいかないのである。まあ,このころ何人もの先生が殴られていたが,このワルのリーダーはわきまえて私には手を出さなかった。私が学級担任なので,仁義を守っていたのだろう?
そんななかで,彼とはよく話をした。彼は能弁で,学校で今までやってきたことを何でも自慢げに話した。その内容は,とてもここでは書けないような内容も含んでいた。つまり,社会で発生する様々な種類の犯罪が,学校のなかで行われていたということである。学校は,なるべくトラブルを外部に知られたくないので,隠蔽しようとし,治外法権的になってしまう。その結果,さらに子どもたちは荒れていったのだ。
今はどうなのだろう。
学校は落ち着いたのだろうか。
違うと思う。確かに以前のような荒れ方は少なくなったのかもしれないが,違ったかたちで荒れは続いているのではないか。実際,私が最後に勤務した中学校も,お世辞にもいい学校とは思えなかった。授業中の校舎徘徊,他の教室に入っての授業妨害,学校からの脱走,私が再任用教師として勤めた最後の1年間,私が知り得たことだけでもいろいろある。
そして,学校は,以前以上に,スマートに,合理的に,生徒の荒れをうまく包み込み,何もなかったようにしていく。それを教育というのはちょっと違うと思うのだが,若い先生たちも,そつなく対応していく。何もなかったように,それとなく日々が進んでいるようだった。(私には違和感しかなかったが)
全然解決していないが,学校は,何事も受け流しているように感じた。とにかく大事にならないように,管理職もうまく立ち回り,なんか普通の学校を装うことができていた。
そう。教師も生徒ももう学校に幻想を抱くことなく,学校なんてそんなところだと冷静に割り切って,それぞれがそれぞれのことをしている。教師も生徒もそつなく。そつなく自分ファースト。アツクなるなんて,なにそれ?金八先生なんてあり得ない。
そう。学校に棲息するみなさんは,個としての欲望・欲求・役割を,合理的に,それぞれが追求するようになったのである。
これは,ひょっとして,学校だけでなく,社会も,世界も,そうなってきているのだろうか。
でも,本当に,ほんとうなのだろうか。