私は無職である。
老後も仕事はするべきだと考えているのだが,今はしない。
よってヒマである。じゃあ何をしているのか。
よく,図書館に行くようになった。
私は本が大好きである。私は,本に育てられ,本に教えられ,本に助けられ,本から様々な恩恵を受けてきたと思っている。だから,図書館は私にとってパラダイスである。図書館にいるだけで,幸せ感にひたれるのだ。
ところが,その心地よい気持ちになっている私に,冷水を浴びせるような思いにさせる存在がある。
老人たちである。
平気で携帯で大声で話す,椅子に足を投げ出して座る,ノートパソコンを持ち込みカチャカチャと強くキーボードを響かせる,しまいには放屁をしながら歩いている,のである。とにかく老人たちのマナーの悪さがひときわ目立つのである。
彼らはわかっているのだろうか。現在の日本の最大の問題の1つが高齢社会だということを。高齢者が,若者たちの,社会の重い負担となってきている。昔なら老人といえば希少な存在でご苦労さんといった感じだったが,今はそこら辺じゅうにうろうろと手持ちぶさたにいる存在なのだ。
だからこそ老人は,長年生きてきた存在として,せめて礼節を重んじ,若者たちの範となるような行動に努めるべきではないのかと,私は思う。
しかしこの老人たちは,図書館だけでなく,そこかしこでトラブルを起こしたり,逆ギレしたりしているのだ。
いったいどうすればいいのだろうか。
全然そんなことなんか気にもならないような老人の表情をまじまじと見ていると,何か私のなかで引っかかりだした。そしてその老人の顔をよくよく見ていると,そう,昔教わったやつ,ドッペルゲンガーというやつだ。
目の前の老人の顔が,私の顔そっくりに見えてきたのである。